きのこの害菌問題について

はじめに
 きのこの栽培において、栽培しているきのこ以外の菌(ここでは、すべて害菌と呼ぶことにする)が原木や菌床、子実体上に発生し被害を与えることがあります。発生する菌には、いわゆるカビと呼ばれる糸状菌から細菌(バクテリア)まであり、赤いものや青いもの、黄色いもの、緑のもの、白いものと文字どおり色々な菌がいます。その発生機構も複雑で、例えば害菌が拡大していく方法にしても、胞子を作って拡がっていくもの、昆虫やダニを媒介に拡がっていると思われるものなどがあります。また、原木栽培や菌床栽培といった栽培方法の違いによっても被害の形態はかなり異なります。しかし、これらの害菌が実際にどれくらいの被害を与えているのかといったことは、あまり調べられていません。なぜかといいますと、まず第一に発生する菌が多種にわたるため菌の特定が困難なことがあげられます。次に、統一された調査方法がないため、客観的に被害を評価することが出来ないことがあげられます。現在これらの問題を解決するために、DNAを利用した害菌類の特定方法や病原性の検定法などを研究中です。また、九州地区林試協(九州地区林業試験研究機関連絡協議会)のシイタケ分科会において調査マニュアルの作成がすすめられています。


害菌防除の考え方
1,菌床栽培
 基本的に菌床栽培では、培養段階までの害菌の混入はないはずです。しかし実際には、結構培養中の菌床内にも害菌が侵入し被害を与えています。このような場合、まず、どの段階で侵入してくるのかを特定する必要があります。検討する項目としては、
(1)培地の殺菌不良
(2)培地殺菌後の殺菌釜への戻り空気による感染
(3)接種時
(4)種菌自体の感染
(5)培養室内における感染
などが挙げられます。この中の特に(1)から(4)までのケースでは菌床に致命的なダメージを与えることになるので注意が必要です。
 また、(5)の場合はもう少し感染ルートを調べる必要があります。まず第一にどんな菌が多く出ているか、そしてその菌は空気中に胞子を(a)飛ばしやすいものか(b)しにくいものかを検討します。(a)の場合、空調設備のファンが強すぎると害菌の拡散を助けることになるので、ファンの強さや培養菌床の置く位置などに注意が必要です。(b)の場合、ダニ等が害菌の拡散を助けていることが考えられます。
 発生段階では、培地がむきだしになっていることやきのこが出ているので薬剤が使用できないため、より防除は困難になります。とりあえず、非加熱性の加湿器を利用している場合、その中に菌が生息していて、加湿することにより菌をばらまいていることがよくあるので、加湿機内の水には注意した方がよいでしょう。
 いずれの場合も、被害が出ている菌床は早めに取り除き、殺菌処理や焼却処分することが必要です。

2,原木栽培
 原木栽培では、菌床栽培と違い無菌的な操作は出来ません。そこで、害菌対策として大切になってくるのはいかに(1)きのこにとってよい環境を確保し、(2)他の菌にとってよい環境にしないかということが重要になってきます。具体的には、
 (a)高温状態にしない---伏せ込み地の検討
 (b)乾燥状態にしない---散水装置の設置
 (c)長時間含水状態にしない---雨避けシートをつける
 (d)天地返しを定期的に行う
 (e)空気の流通を確保する
ことなどが挙げられます。
 原木栽培でも、被害が出ている原木は早めに取り除き、処分することは重要なポイントです。また、大きな被害が出たところへの連続しての伏せ込みは、なるべく避けた方がいいでしょう。


害菌の種類とその被害
1,Trichoderma属
 この菌は、きのこ栽培の害菌類の代表格ともいえるほど報告例の多い菌です。被害例は、原木栽培シイタケ、菌床栽培シイタケ、菌床栽培ヒラタケ等多種類のきのこ栽培にまたがっています。最大の特徴としては、菌寄生性を示すという点で、きのこの菌糸を酵素で溶かし、自分の栄養とすることが出来ます。外観的には、比較的明るい緑色(種類によっては白)の胞子を形成するため、緑色(種類によって白)のコロニーを菌床面や原木小口面などに形成します。胞子形成能力も高く、菌糸伸長も速いため甚大な被害を与えることがあります。

2,Penicillium属
 この属の菌には、抗生物質のペニシリンを生産するものやチーズ生産等に利用されているものがおり、ヒトとの関わりは深い菌です。害菌の特徴としては、胞子生産能力が高く飛散しやすいため、培地内に混入する確率が非常に高いことがあげられます。ただし、菌寄生能力は低く、培養後期であればあまり問題とはならないと思われます。外観的には、青々としたコロニーが形成されるため、青カビと呼ばれることもあります。

3,Verticillium属
 この菌は、ツクリタケ(商品名:マッシュルーム)に褐変病を起こす菌とされています。ツクリタケは、腐食性を好む菌であるため栽培はコンポストと呼ばれる堆肥を培地として栽培しています。そのため、よく施設にキノコバエが発生することが多く、このキノコバエにVerticilliumがくっついていて、被害が拡がっていると考えられています。

4,Neurospora属
 アカパンカビと呼ばれるダイダイ色をした菌糸をしたカビです。この菌の特徴としては、菌糸伸長が非常に速いことがあげられます。ひどいときには、菌糸が、培地のふたを持ち上げることもあります。しかし、この菌は菌糸伸長が速いことをかわれて真菌類の遺伝研究の材料として、人の役にたっています。


 害菌対策指針の暫定版を用意しています。対策の参考にしてもらえれば幸いですが、まだまだ内容的には不十分であるとおもいますので、いろいろとリクエスト等をしていただけると、さらによい対策指針が出来ていくと思いますので協力をお願いします。


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