綾リサ−チサイト
綾リサ−チサイトは、長期間にわたる森林の生態調査を目的とした大面積試験地です。ここでの調査研究は、名古屋大学、名古屋産業大学、滋賀県立大学、北九州市立自然史博物館、静岡大学、および鳥取大学の研究者と共同で進められています。
(写真左)綾リサ−チサイトの外観, (写真右)綾リサ−チサイトの林内
綾リサ−チサイトの概要
1. 調査研究の内容
綾リサ−チサイトでは、樹木の成長、種子の散布、実生や稚樹の生残などを長期間にわたり、継続的に観測します。観測デ−タは、
1993年に発生した大きな台風撹乱
(図−1)の前後にわたっています。
主な研究目標
- 種の生活史の特性
- 更新に関わる生物・非生物要因の評価
- 群落の維持・変動のメカニズム

図−1 台風撹乱(1993年)前後の林冠ギャップ(■)の分布
2. 綾リサ−チサイトへの交通
- 宮崎自動車道高原インター〜野尻町〜高岡町経由で綾町へ。宮崎市からは,国道10号を使って高岡町を経由するか,県道を国富町経由で綾町へ。
- 綾町から綾北川沿いの道路を通り,「竹野」の集落から大森岳林道に入る(
地図1
)。綾町から綾リサ−チサイトまで車で約30分。林道のゲートの鍵は森林総合研究所九州支所または竹野森林官事務所で借りて下さい。
- 林道沿いの看板「照葉樹林の動態調査地」
があるカーブで車を止め,そこから歩いて約250m下ると綾リサ−チサイトに到着(
地図2
)。
3. 気候
年平均気温は17.3℃,年降水量は2,457mm,暖かさの指数は148 (1971-2000年間平年値)。
4. 位置・地形・地質・土壌
- 位置:北緯32度03分,東経131度12分,標高380〜520m
九州森林管理局 宮崎森林管理署 綾事務所管内竹野国有林93林班
- 地形:平均傾斜30度の急峻な北向き斜面であり,早壮年期ないし満壮年期地形を示しています(図−2)。
- 地質:中生代の砂岩・頁岩を基岩としています。
- 土壌:褐色森林土が支配的であり,BD,BD(d)型が主。調査区内のpHは4.3〜7.2の範囲にあり,全体的に弱い酸性の土壌。
図−2 綾リサ−チサイトの微地形
5. 植生の概要
綾リサ−チサイトには,ウラジロガシ−イスノキ群集の主な構成種が多く出現します。例えば,高木層にはウラジロガシ,アカガシ,イスノキ,スダジイ,亜高木層にはヤブツバキ,サカキ,低木層にはハイノキ,ホソバタブ,ホソバイヌビワ,草本層にはコショウノキ,キジノオシダ,ミヤマトベラがみられます。一方,イチイガシ−ルリミノキ群集の構成種とされる種も多く,高木層にイチイガシ,タブノキ,トキワガキ,低木層にルリミノキ,ヤマビワ,シロバイ,センリョウ,ヒサカキ,クロキ,草本層にコバノカナワラビ,ホソバカナワラビ,ヤブコウジ,フユイチゴ,ハナミョウガが出現します。すなわち,綾リサ−チサイトは,ウラジロガシ−イスノキ群集とイチイガシ−ルリミノキ群集の接点に位置すると考えられます。
綾リサ−チサイトは相観的には照葉樹林で,主にブナ科,クスノキ科,ツバキ科の常緑樹種やイスノキによって林冠や亜高木層が形成されています。数は少ないですが,ミズキやムクロジなどの落葉広葉樹も林冠を構成しています。林冠の高さは30mを越えることがあります。また,胸高直径が1m以上のアカガシやウラジロガシなどがみられます。過去にこの地域一帯でカヤが単木伐採されたようですが,リサ−チサイト内には切り株や搬出路など人為撹乱の痕跡はみあたりません。
今までの植生調査や毎木調査で確認した木本種は49科115種です。この中には,アデクやリュウキュウマメガキなど琉球列島から南方に分布する南方要素の樹種もみられます。
6. 固定調査区と定期調査
- 固定調査区
- 綾リサ−チサイトには,200m×200mの調査区(4ha調査区)と,その中に100m×120mの調査区(1.2ha調査区)があります(見取り図)。これらの調査区は10m間隔のメッシュに分割され,メッシュの交点には番号をつけた杭をうってあります(杭の配置)。
- 毎木調査
- 最初の毎木調査は1989年に行なわれました。4ha調査区に生育する胸高直径5cm以上の全樹木に番号をつけ,根元の位置,胸高直径を測定し,階層や萌芽数なども記録しています。1989年以後,1997年までは隔年,1997年以降は4年に一度の頻度で毎木調査を継続しています。
- 稚樹の調査
- 胸高直径5cm未満の個体で当年生でないものを稚樹とします。4ha調査区の10mメッシュ交点に4m×4mの方形区を設け(計400個),その中に成育する稚樹に番号をつけ,樹長や胸高直径を測定しました。稚樹の調査は1994-2004年の10年間,2年に一度(偶数年に実施)の頻度で行いました。
- 実生センサス
- 1.2ha調査区のメッシュ交点とメッシュの中心に2m×2mの方形区を設け,その中で発生した当年生実生に番号をつけ,生残,樹高成長,虫害などの調査を行いました(調査の様子)。このような実生センサスを,1991年4月-1997年3月の期間は263箇所,1997年4月-2001年3月の期間は142箇所,2001年4月-2004年3月の期間は42箇所の2m×2mの方形区で,毎月末に行いました(冬季間など実生センサスを行っていない月もあります)。
- 種子・リターの落下量
- 1.2ha調査区内に0.5m2の漏斗型トラップを規則的に設置し,中に入った種子やリターを1991年以降毎月回収しています。回収したサンプルから種子や各種リターの選別,秤量を行っています。1.2ha調査区内のトラップの数は1991年4月-1997年3月の期間は263箇所,1997年4月-2001年3月の期間は142箇所,2001年4月以降は42箇所です。
7. 主な樹種の分布
毎木調査の結果から、4ha調査区に生育する胸高直径5cm以上の個体の分布が把握されています。ここでは主な樹種の分布をみることができます。
a) ブナ科樹種の分布
b) クスノキ科樹種の分布
c) イスノキ(マンサク科)の分布
d) ツバキ科樹種の分布
綾リサーチサイトでの研究成果
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