マツクイムシ

マツ

マツノザイセンチュウ

マツ枯れのしくみと防除

はじめに


 マツは、林業的に重要であるばかりでなく、海岸林や庭木、盆栽として古来より日本国民に最も親しまれてきた樹木といえます。うち続くマツ枯れによって南西日本の多くのマツ林が消滅しましたが、最近は東北地方など寒冷地にも侵入蔓延する傾向をみせています。
 松枯れに関する最近の研究から、マツの枯損はマツノザイセンチュウという体長1mm内外の線虫によって起こる伝染病であることが分かり、その線虫はマツノマダラカミキリによって伝播されることが判明しました。
 この小冊子では、マツ枯れの仕組みを分かりやすく解説し、現在とられている防除法を示しました。より的確な防除法の確立にむけ、今も鋭意研究が進められています。しかし、マツ枯れ問題は研究者や行政機関の努力だけで解決できるものではなく、地域住民の一人一人がマツ枯れの重要性を認識し、防除対策に参画していく必要があります。本冊子がそのための一助になれば幸いです。



松枯れのしくみ


 一般にまつくい虫と呼ばれているマツ枯れは、病原体であるマツノザイセンチュウ(線虫)とマツノマダラカミキリ(カミキリ)との巧妙なからくりによって起こります。

 5月下旬から7月中句にかけて前年枯れたマツから、線虫を保持したカミキリが羽化し、健全なマツに飛んで行き、若枝の樹皮を食べながら成熟し(後食)ます。この時、線虫はカミキリからはいだしマツに乗り移ります。マツに侵入した線虫は、梅雨あけの高温乾燥期になると、4日間という短いサイクルで樹体内全般にわたって増殖し、樹脂流出の停止や前年葉の黄変といった初期症状をマツに引き起こします。成熱し産卵の用意ができたカミキリは初期症状を呈するマツを選んで産卵します。

 産みつけられた卵はやがてふ化し、枯死していくマツの樹皮下を食べて生育し、終齢幼虫で越冬し翌春さなぎになります。枯死木中で越冬した線虫は、カミキリが羽化する直前に気門より気管内へ侵入し新たなマツヘ運ばれます。


松枯れの防除

 農地や住宅地を風や潮の害から保護している海岸マツ林、お寺や神社の境内にそびえる老松、名勝地のマツなど、なんとか保護し子孫に伝えたいものです。
 現在とられている防除法の代表的なものは、カミキリの後食を防ぐための薬剤散布です。広い面積のマツ林にはヘリコプターによる空中散布、住宅や魚介類に飛散の恐れがある場合には地上からの散布を行います。貴重なマツを守るためには、殺線虫剤を樹幹に注入する方法がとられます。しかし、最も大事なことは枯れたマツを焼却するなどしてカミキリを駆除し、感染源を断ち切ることです。
 この他、線虫に抵抗性のあるマツを作り出す方法、カミキリや線虫の天敵を利用する方法、微生物を使ってマツに抵抗性を付与する方法などの研究が進められています。

マツノザイセンチュウの調べ方

線虫の分離方法
 図は罹病木中からマツノザイセンチュウを検出するためのベールマン法です。線虫は材片より遊出し下方へ降りてきますので、これをとって調べます。

近縁種との見分け方(雄の尾端で識別)


まつくい虫に関する研究の流れ