>>  Home  >>  九州の森と林業 >>第78号 平成18年12月1日発行
森林総合研究所九州支所 定期刊行物 九州の森と林業

きのこシリーズ(21)

ロクショウグサレキン

 あまり一般にはなじみがないと思われますが、ロクショウグサレキンという名前のきのこがあります。名前の由来は、そのきのこが緑青(ろくしょう)色をしていることにあります。また、菌糸のときにも色素を滲出するため、きのこだけではなく、菌糸が伸びた材もいっしょに青緑色に染まってしまいます。液体培地で、振とう培養を行うと、菌糸が青緑色を呈するためマリモのようになってしまいます(写真−1)。小さなきのこですが、森の中を丹念に探せば、九州の森の中でもごく普通にみることが出来ます(写真−2)。季節もあまり選ばないので、少し注意をしながら森の中を歩くとけっこうみつけることが出来るでしょう。

 学名は、Chlorociboria aeruginosa といい、その意味するところは属名、種小名ともに緑青色を指しています。このように、このきのこはなんといってもその色に特徴があります。そして、文字通りその特色を利用して、草木染めならぬ「きのこ染め」に利用されることがあります。染め方は、ロクショウグサレキンにより青緑色に染まった材を細かく砕いて、苛性ソーダで処理後、苛性ソーダと還元剤で処理することで色素成分を抽出し、酢酸で中和後、その液に絹をつけ染色。水洗い後、空気酸化させると青緑色に発色します(1)。実際にこのロクショウグサレキンで染めた布を見せてもらったことがありますが、なんとも表現しがたい妙な美しさがありました。

(1) 金子周平,珍品きのこ染め,きのこの100不思議(日本林業技術協会),pp. 122-123 (1997)
写真−1 ロクショウグサレキンを液体培地で振とう培養したところ(その姿は、阿寒湖のマリモのよう) 写真−2 ロクショウグサレキンの子実体

森林微生物管理研究グループ  宮崎 和弘 


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