>>  Home  >>  九州の森と林業 >> 第75号 平成18年3月1日発行
森林総合研究所九州支所 定期刊行物 九州の森と林業

平成17 年の九州地域の森林病虫獣害発生状況

森林動物研究グループ長

伊藤 賢介

チーム長(生物被害担当)

矢部 恒晶

森林微生物管理研究グループ長  

佐橋 憲生 

 森林総合研究所では、林木に対する病虫獣害の早期警戒システムの完成をめざして、全国の被害発生情報を収集し記録しています。各都道府県の林業試験研究機関、国有林の各森林管理署や日本樹木医会などに協力を仰いで、被害発生情報をデータベースに蓄積しています。情報収集の手段としては、ハガキ形式の「森林病虫獣害調査票」とインターネット上の「森林病虫獣害データベース」を利用しています。こうして収集した情報を整理して本誌や「森林防疫」誌に定期的に公表しているほか、上記ホームページからも閲覧できるようにしています。

写真- 1 キマダラカメムシの成虫と幼虫
(2005 年8 月20 日熊本市)
写真- 2 クスアナアキゾウムシ幼虫とタブノキ被害木(2005 年11 月1日宮崎県高岡町)
 虫害:
31 件の虫害情報が登録されました(表-1)。これらの情報と新聞報道や論文発表などから得た情報のうち、主に被害の規模や分布が今後拡大するおそれのあるものについてその動向をここにまとめました。キアシドクガによるミズキとクマノミズキの食葉被害が大分県別府市と湯布院町(現由布市)で発生しました。この虫は国内では北海道、本州、四国に分布していますが、1990 年代から九州北部でも発生するようになり、九州南部への拡大が危惧されています。キアシドクガには毒はありませんが、幼虫が蛹になるときに木から降りて集団で移動したり、成虫が家屋に飛び込んだりしますので、大量に発生すると不快害虫として騒がれることがあります。2001 年から鹿児島県本土で拡大を続けてきたキオビエダシャクは2004 年秋以降に激減したと思われていましたが、宮崎県串間市で大量発生してイヌマキに食葉被害を与えています。隣接する南郷町でも発生しており、再び被害拡大が危惧されます。また、沖縄県では戦前からこの虫が慢性的に発生していますが、2005 年は石垣市で大量に発生しました。熊本市でキマダラカメムシが発生しました(写真-1)。サクラなどの広葉樹のほかにメタセコイアやラクウショウの樹上でも幼虫が発見され、これらの木から吸汁しているものと思われますが、実害はありません。この虫は1770 年代に長崎県の出島で発見され、その後ずっと国内では見つからずにいました。しかし、近年になって長崎県、佐賀県、福岡県、沖縄県のほかに中国・四国地方でも発見されるようになりました。熊本県では1996年以降に各地で発見されています。クスアナアキゾウムシは栽培シキミの重要害虫として全国的に問題になっていますが、この虫によるタブノキ若齢林の穿孔被害が宮崎県高岡町で確認されました(写真-2)。明治時代には九州各地のクスノキ若齢人工林で大発生して多数の木が枯死したという記録がありますので、クスノキやタブノキの人工林では注意が必要です。宮崎市と熊本市で多数のクスノキ街路樹にクスクダアザミウマと炭疽病が同時発生して、葉や枝が枯れました。劣悪な植栽環境や強度剪定と高温少雨という悪条件が重なってクスノキが衰弱したことが、大きな被害になった原因と考えられています。また、クスクダアザミウマが炭疽病の発生に関与している疑いが持たれています。クワカミキリによるドウダンツツジの被害が熊本市で発見されました。ツツジ類の生立木に穿孔加害する昆虫としてこれまで知られているのはソボリンゴカミキリとゴマフボクトウだけでしたが、最近は岐阜県内各地でもクワカミキリによる被害が発見されており、被害拡大が懸念されます。ヤシオオオサゾウムシによるフェニックス被害の拡大が続いています。福岡県では大牟田市で、長崎県では時津町で新たに被害が発生しました。長崎県では長与町、大村市、諫早市でも新たな発生が確認されており、2003 年の県内での被害発見以来すでに100 本以上のフェニックスが枯死しています。また、宮崎県では1998 年の被害発見から2005 年3月末までに宮崎市や日南市を中心とする13 市町で枯死木が発生しています。なお、本州での新たな被害地として、兵庫県(淡路市)でこの虫の発生が発見されました。ハリエンジュ(ニセアカシア)の葉を巻いて虫こぶを作るハリエンジュハベリマキタマバエが福岡県、熊本県と本州各地で発見されました。ハリエンジュは北米原産の木で、明治初期から輸入され蜜源や街路樹などとして植栽されています。この虫の原産地も北米で、輸入された苗木に紛れて侵入したと考えられています。2004 年に沖縄県各地で庭木などにタイワンキドクガが大量発生して毒針毛による皮膚炎被害が多発しましたが、2005 年も石垣市で大量に発生しました。
 獣害:
登録された発生情報はありませんでしたが、依然としてニホンジカなどの被害が多発しています。全国ではニホンジカのほかにツキノワグマニホンカモシカイノシシによる林木被害が登録されました。このうち石川県で発生したイノシシ被害は、25 年生スギ人工林における掘り返しによる根系の被害というこれまで見られなかった被害形態でした。こうした新たな被害形態や被害発生パターンを九州でも把握するためには、各地からの被害情報が有効な資料となりますので、引き続き皆様のご協力をお願いします。
 病害:
6件の発生情報が登録されました(表-1)。宮崎市と熊本市で街路樹のクスノキに炭疽病が発生しました。またマツ材線虫病は九州全域で発生していますが、沖縄県や鹿児島県桜島で特に甚大な被害が発生しています。
 

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