>>  Home  >>  九州の森と林業 >> 第 4 号 昭和63年6月1日発行

森林総合研究所九州支所 定期刊行物 九州の森と林業

阿蘇地方に発生した造林地の雨氷害

造林第2研究室 上中 作次郎

阿蘇地方で発生した雨氷害

 今年の 2月27日から28日にかけて,熊本県高森町,波野村一帯にスギ造林木の幹折れ,根返りなどの激しい被害が発生した。この被害は冠雪害とは異なり,雨氷害として新聞などにも大きく取り上げられた。熊本県阿蘇事務所の取りまとめによると,比較的局地的な被害であったにもかかわらず,被害額は1億 6千万円と報告されている。この雨氷害とは過冷却した雨滴が,氷点以下の地物について急に凍り,透明な無定型の氷で表面を包むのが雨氷である。林木の樹冠に氷結した雨氷が次第に発達し,ある重さ以上の荷重となったとき,幹に加わる破壊力で幹折れ被害等を起し,風があるときは風の破壊力も付加され被害は大きくなる。(*過冷却:水温が氷点以下になっても氷らずに,水の状態で保たれていること)

被害の発生し易い地形

 被害地の概況を調査した結果,阿蘇東側外輪部の火山性丘陵地に集中しており,その中でも標高800〜900m,東〜北東斜面に分布するスギ25〜30年生の造林地に多発し,小塊状あるいは等高線に沿って帯状に破壊されているのがめだった。
 1973年 3月にも同じような雨氷害が阿蘇地方に発生しており,今回の被害地域とほぼ重っていることは興味深い現象である。

被害の形態

 被害の形態は幹折れが最も多く,梢の先端 2m前後の幹折れから,根元 1〜2mの幹折れまで,折高に幅があり,多くの幹折れ木は樹高の60%前後の高さで被害が現れていた。幹折れについで幹曲がり,ふたまた木の裂け折れ,梢曲がり,傾き,根倒れなどの被害がみられ,これらの被害形態が混在して発生した。
 保育の違いも被害の程度に関係し,間伐直後の造林地では激害の様相を呈していたが,閉鎖の進んだ林分では軽微な被害にとどまっていた。林分構造の違いと着氷荷重のかかりかたの間に,密接な関係があるものと考えられる。また被害を受けたのはスギ林が大部分で,ヒノキ林ではほとんど被害が発生していなかった。

今後の対策

 造林地の気象災害の中で,雨氷害はそれほど聞きなれた災害ではないが過去に北海道,千葉県,山梨県,長野県などでこの被害が記録されている。九州における雨氷害の記録は,前述した14年前の阿蘇地方の事例が始めてであった。
 前回および今回の調査から,除,間伐時にふたまた木を除去すること,枝打ちを励行すること,スギとヒノキの混植,あるいはこの地方で生長のよいケヤキ,ヤマグワなどの落葉広葉樹と混交させることなどが雨氷の被害を回避する方法ではないかと考える。


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